
<ポタジェのある暮らしシリーズ>
和ハーブインストラクターの半谷美野子さんによるコラム。1月は冬の景色を彩り、色とりどりの花色は目にも鮮やかに映る、エディブルフラワー『ビオラ』のお話です。
「冬のときめくエディブルフラワー“ビオラ”」
“エディブルフラワー”という言葉を昨今、よく聞くようになりましたが、まだ身近でない方もいらっしゃるかもしれません。“エディブルフラワー”とは「食べられる花」という意味で、一般的に食用花のことをさします。エディブルフラワーは料理やお菓子、お皿にのっているだけで、お料理がキラキラ見えて、目からワクワクさせてくれる、ときめき食材。食卓に彩りを添える食材として近年注目を集め、料理からお菓子まで様々なものに食材として使われているのもうなずけます。
そんなエディブルフラワーですが、実は昔から日本でも、世界でも食文化に取り入れられてきました。
日本でよく知られているのは桜の花。江戸時代に桜の花の塩漬けが考案されたといわれており、桜茶やあんぱんだけではなく、春になると桜の花様々な料理やお菓子に今も使われています。

もうひとつ代表的な日本のエディブルフラワーが江戸時代から食べる文化ができたといわれている「菊」。
奈良時代に、日本で現在でも食用菊として栽培されている「延命楽(もってのほか・カキノモト)」が中国から伝来したといわれ、今も酢の物や和え物、かざりなどに使われているのでご存じの方も多いでしょう。
ほかにも伊豆大島などでは椿の花を天ぷらにするなど、様々な食用花文化があるかと思います。厳密にいえば、ブロッコリーやカリフラワー、菜の花やふきのとうなども花の部分を食べているので、エディブルフラワーかもしれません。世界で考えると、古代ローマでは“バラ”がデザートに使われ、中国では不老不死のお茶といわれた「菊花茶」も昔から飲まれています。“ニオイスミレ”で作られた、ハプスブルク家の皇妃が愛した「スミレの砂糖漬け」も有名です。

ちなみに今日本では「パンジー」「ビオラ」「ナスタチウム」「バラ」「ラベンダー」「カレンデュラ」(カレンデュラのコラム参照)「コーンフラワー」「キンギョソウ」「カーネーション」「マロウ」「花オクラ」「キンモクセイ」「アリッサム」「ズッキーニ」など、多様な植物の花がエディブルフラワーとして、つかわれています。色々あるエディブルフラワーの中でも、冬から春が旬なのが「ビオラ」です。同じスミレ科のパンジーとは似ていて、区別しにくいですが、園芸界では一般的に、花の大きさが5㎝以上のものを“パンジー”、5㎝以下の小さいものを“ビオラ”と区別しているそうです。ただ今は品集改良されたものも多く、一概にこの5㎝基準が適応しない種類もあるとのこと。
ちがいは大きさだけでなく、ビオラの方がパンジーより耐寒性が高いという特徴があり、日の当たるところで管理すれば、冬でもよく花を咲かせ、花期も春までと長く、それも人気のひとつかと思います。
エディブルフラワーとして、ビオラが魅力的なのは、花が小さく、繊細な印象を持っていることと、味にくせのないところ、豊富な色のバリエーションがあげられます。紫、黄色、白、オレンジ、ピンクなど、一色だけでなく、複数の色が組み合わさったものも多くあり、料理やスイーツのイメージにあわせて色々選べるのもポイント。洗ってサラダにのせたり、氷を作る時にビオラの花を入れて凍らせたり、生のまま簡単に使えるのにもかかわらず、おしゃれな料理やお菓子になるので、家で育てているとパっと使えて便利です。
栄養面での研究もおこなわれていて、花びらにはビタミンや抗酸化物質が含まれいることもわかってきており、ただ綺麗なだけではなく、健康面でも注目されて、ますます目にすることが多くなりそうです。

さて、ここまでエディブルフラワーについて書いてきましたが、注意点があります。それは、必ず「食用」として販売されているものか、ご自分で食用に育てたもの以外は食べてはいけないということ。一般的に園芸用として販売されているものは、「観賞用」のため、「食用」ではありません。「観賞用」と「食用」では農薬の量など育て方がちがいます。くれぐれも「観賞用」で売っている花を召し上がらないように気を付けてください。
ビオラは秋に種を蒔いて育てることができますし、エディブルフラワー専門店で苗を売っています。自分で育てたものは特にかわいいですし、無農薬でも育てられるのでおすすめです。ひとつひとつ花を愛でながら「お花摘み」という楽しみもできます。この冬はエディブルフラワー用のビオラを入手して、冬にワクワクお花摘み&エディブルフラワー料理いかがでしょう?

