
<ポタジェのある暮らしシリーズ>
和ハーブインストラクターの半谷美野子さんによるコラム。
2月は春の訪れを感じる頃、黄金色に輝く小さな果実キンカンのお話。
「キンカン」
秋から冬が旬の果物のひとつ「キンカン(金柑)」。小さくて美しいオレンジ色の果実が特徴のミカン科の柑橘類です。果実は甘酸っぱく、果皮は甘さの中に、苦みもあり風味豊か。そして皮ごと生で食べられる数少ない柑橘類として知られています。
食材としてだけではなく、幅広く利用されている“キンカン”の魅力をご紹介したいと思います。

キンカンは縁起物
キンカンの原産地は中国。キンカンを「金桔」と書き、「金」はお金を意味し、「桔」は吉と発音が似ていることから、「吉祥と富をもたらす縁起のいい木」として縁起物とされています。そのため、春節の時には、日本の門松のようにキンカンの木を飾るそうです。
日本のお節料理にキンカンの甘露煮が入っているのにも意味があります。金柑は「金冠」という字をあてて、光り輝くその様子から富に恵まれるようにという願いと、金柑には、「ん」が入るため、金運アップという意味が込められているといわれています。

キンカンの品種
日本には鎌倉時代~室町時代に渡来したという説と、江戸時代に渡来したという説がありますが、栽培がはじまったのは江戸時代だといわれています。現在、一般的に栽培されているキンカンは「ネイハキンカン」、「マルミキカン」、「ナガキンカン」が多く、種なしキンカン「プチマル」や果実が大きい「大実金柑」、宮崎県特産の完熟きんかん「たまたま」など色々な品種があります。

健康効果
キンカンといえば、のど飴を思いおこす方も多いのではないでしょうか?古くから薬用にも使われ、生薬名は「金橘(キンキツ)」といいます。のど飴にも入っていることからわかるように、風邪や咳、喉の痛みを和らげる効果があるとして、キンカンのハチミツ漬けや甘露煮などが親しまれていますが、生薬としては、二日酔いや消化不良にもよいとされています。また、焼酎漬けは疲労回復や冷え性にもよいそうです。
ここまで効能を書きましたが、この効能は小さいながらも栄養がとても豊富なためといえます。キンカンの一番の特徴は栄養価の高い皮を食べられること。キンカンの皮にはヘスペリジンというポリフェノールの一種が含まれており、これは血管を強化し、血流を改善する効果があるため、腰痛や冷え性がある方にもおすすめです。また、ヘスペリジンには喉や扁桃腺の炎症を抑え腫れや痛みを軽減する作用があるもあるそうです。なんとヘスペリジンにはビタミンCの吸収率を高めサポートする働きもあるそうで、ビタミンC豊富なキンカンですが、よりいっそう免疫力を向上させ、風邪予防や病気の回復を早める効果があるとされています。ほかにも果皮に含まれるシネフリンは気管支の拡張効果や筋肉弛緩効果が知られていて、咳を沈める効果もあるなど、皮の大事さがよくわかります。
ビタミンC以外にも、ビタミンAやビタミンE、食物繊維も多く、黄色の色素にも抗酸化作用があり、消化促進作用、腸内の善玉菌を増やし、腸の調子を整えてくれるなど、からだにいいことづくめ。もちろん、お肌にもよいことばかりです。キンカンがあれば冬を乗り切れる気になってきます。

キンカンの食べ方
加熱に弱いビタミンCなどを、あますところなく摂取できるのが、生で食べること。まるのままだと食べにくい種類のキンカンもありますが、薄くスライスしてサラダに混ぜたり、スムージーなどにするとフレッシュのキンカンが食べやすくなります。また、スライスしてドライにすれば、お茶やフレーバーウォーターなどに入れることができ、一年中活用できます。
我が家では常備薬として、キンカンをはちみつに漬けた「キンカンはちみつ」を作り、冬は常温、夏は冷蔵庫(冷蔵庫に入れないと発酵してくることがあります)で保管しています。ほかにもコンポートやジャム、キンカンピールにすると保存食として、色々活用できるのでおすすめです。保存食にしておくと、デザートや料理のアクセントとしても利用でき、その甘酸っぱい味わいだけではなく、綺麗な色と形で彩りも添えてくれるので重宝しています。
調理の際、種をとるのが面倒ですが、今は種なしキンカンもありますし、キンカンの種も活用できると思うとがんばれます。キンカンの種をユズの種のようにホワイトリカーや日本酒につけると、ペクチンによってプルプルの自然の保湿ジェルができるので、興味のある方はお肌の調子をみながら試してみてはいかがでしょう。
最後に、キンカンは常緑低木で比較的育てやすい植物です。大きな鉢で育てることもできます。縁起物の木ですし、無農薬での栽培もしやすく、実もなりやすいので、おすすめです。
冬のお庭や食卓を彩り、からだも元気にしてくれるキンカン、魅力的だと思いませんか?

