春を享楽する花『カキドオシ』~ポタジェのある暮らし <3月>

春を享楽する花『カキドオシ』~ポタジェのある暮らし <3月>


<ポタジェのある暮らしシリーズ>

和ハーブインストラクターの半谷美野子さんによるコラム。3月は私たちの身近で見られる、香り高く薄紫色の花『カキドオシ』のお話です。

 

 

洋食にもピッタリな癒しの和ハーブ「カキドオシ」



いよいよ春!自然の中にでかけて、野草を摘んでみたいなと思う方も多いかもしれません。 今回は、そんな時におすすめの和ハーブ「カキドオシ」をご紹介したいと思います。



 

 

カキドオシとは?

 

漢字で書くと「垣通し」。シソ科の多年草で、日本全土の日の当たる路傍や山野に自生しています。

乾燥が好きではないので、適度に湿った土地や半日陰、川の土手に生育しているのを見かけることが多いです。

六大和薬のひとつといわれ、生薬名をレンセンソウ「連銭草」といい、民間薬として日本では昔から糖尿病や腎臓病に使われてきたようですが、別名「カントリソウ(癇取草)」といわれるように、こどもの疳の虫にもよいといわれています。この頃は血糖降下作用があることがわかり、注目されている薬草です。


ヨーロッパでも古くから民間薬として使われていたそうで、日本では斑入りの葉の種類が「グレコマ」という名前の園芸品種として売られているのを見かけたことがあります。


 

カキドオシの特徴・見分け方

 

1. 葉や茎を切って、香りを確認しましょう!フローラルなミントのようなあざやかでスッとした香りがします。

2.4月に咲く花の色は薄い紫から淡紅紫色で、唇形。萼は筒状なのが特徴のかわいらしい花です。

3.茎を持ってみましょう!シソ科らしく、茎の断面が四角なので、指で触っても四角が感じられます。 花が咲く頃は5~20cmほどの高さに直立し、「垣通し」の名がついたように、徐々につる状になって、垣根を通すぐらい、地をはいながら伸びます。

4.対生した葉の縁は波型に浅い鋸歯があり、柔らかく、しわがあって毛が生えています。丸い葉が連続して茎についている様子が、硬貨がつながってるように見えたことから、生薬名の「連銭草」という名がついたそうです。



 

 

カキドオシの活用方法

 

採取時季は葉や茎が硬すぎない4~5月ですが、生えている時季ならいつでも収穫できます。

カキドオシは香りがよいので、お茶や食べるだけでなく、様々な活用方法があるので、興味のあるものからぜひお試しください。



●お茶

カキドオシの薬効をとりいれやすく、手軽に香りを楽しむなら、やっぱりお茶。

・洗ってから日陰干しにして、乾燥させたものを保存しておくと、いつでもお茶として楽しめます。ほかの和ハーブや紅茶とブレンドして飲むと、またちがったおいしさがあります。

・採取したものをさっと洗って、フレッシュのままお湯を入れて約3分。ドライのものとはちがった風味の色あざやか、香り豊かなフレッシュリーフティーとしていただけます。

・採取したフレッシュのカキドオシを柑橘類のスライスなどと一緒に水に入れ、数時間おけば、さわやかなハーブウォーターの出来上がり!


 

●料理

★フレッシュハーブ

カキドオシは西洋ハーブのような香りがあるので、洋食にもぴったりです。フレッシュでも熱を加えても、バジルのように使うと美味しくいただくことができます。春は、柔らかい茎も葉っぱと一緒に天ぷらなどにして食べられますし、紫色の花もエディブルフラワーとして、野の花寒天やクッキーに飾るなど、エディブルフラワーとして使っています。 また、ペペロンチーノ、ハーブバター、ハーブチーズにするとフレッシュの香りが楽しめます。魚料理や肉料理のつけあわせにしても、味のアクセントになるだけではなく、かわいい形がポイントになるのでおすすめです。

ニンニクやナッツ類とオリーブオイルでジェノベーゼ風ペーストを作ると、パスタやパンのお供にもなり、保存食として使えるので大活躍。ペーストは冷蔵庫や冷凍庫で保存することができるので一年中フレッシュの香りを味わえます。

 

★ドライハーブ

乾燥したドライハーブをミルで細かくして、和ハーブソルトや和ハーブ七味に入れると、様々な料理にいつでも使えます。和ハーブソルトはそのままフライドポテトやスープ、パスタにかけると格段においしくなります。また、ドレッシングやマヨネーズなどに混ぜて、サラダなどにかけても一段とおいしくなることまちがいなしです。


 

 

 

●リラクゼーション

★入浴剤

ドライの葉をお茶パックや綿の袋に入れて、お湯をためる時からお風呂に入れるか、お鍋ややかんで煮出して、お風呂に入れます。疲労回復、新陳代謝の促進、香りによって精神安定、リラックスできるといわれています。

 

★アイピロー

自家製アイピローに、ドライのカキドオシを入れると、目の疲れをとりながら香りに癒されます。



 

 

 

以上、カキドオシについてご紹介してみました。

身近な野草であり、昔の人も活用していた、私たちの暮らしに役立つ和ハーブ。「雑草」といってしまえばそれで終わりですが、楽しく美味しく、生活に取り入れることで自然を見る目も変わり、それが健康で豊かな生活にもつながると思います。この春、是非、カキドオシを育てたり、採取してみませんか?



 

 

 

◆参考文献

「和ハーブ図鑑」:古谷暢基/平川美鶴 《一般社団法人和ハーブ協会》

「食べる薬草事典 春夏秋冬・身近な草木75種」 村上光太郎 著  

「身近な薬草活用手帖」 寺島進 監修 誠文堂新光社

「薬草」 御影雅幸・吉光見稚代 著 保育社 

「家庭できる自然療法」 東城百合子 著 あなたと健康社



◆参考サイト

イー薬草・ドット・コム (e-yakusou.com)

カキドオシ | 日本薬学会 (pharm.or.jp)



◆和ハーブとは

*一般社団法人 和ハーブ協会(https://wa-herb.com/waherb3/waherb3/)では、「和ハーブ」を「在来種(日本原産)、あるいは江戸時代以前より日本に広く自生している有用植物」と定義しています。

 

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