<ポタジェのある暮らしシリーズ>
和ハーブインストラクターの半谷美野子さんによるコラム。6月は地中に実る豆!落花生の魅力についてのお話です。
「地中になる豆!落花生の魅力」
「落花生」ときくと、「ピーナッツのこと!」とすぐわかる方もいらっしゃいますよね。ピーナッツ(peanut)は英名で、食用にされる種子の部分をピーナッツと呼ぶことが日本では多いかと思います。
そして植物学上、標準和名といわれる種名は「ナンキンマメ(南京豆)」といい、南アメリカ原産のマメ科ラッカセイ属の植物です。
色々呼び名がありますが、ここでは「落花生」と書いていきたいと思います。
~落花生の育ち方~
落花生の一番の特徴は、花が地面近くの地上で咲き、受粉後に子房が土の中に入り、地下で実を結ぶこと。
花が終わった部分が、土の中に入っていくユニークな姿から「落花生」という名前が付けられました。この地中に入っていく姿を見られることが、自分で育てる醍醐味といってよいでしょう。
4月中旬~6月上旬ごろにポットや畑に種を蒔きます。深いプランターでも育てられるので、畑が無くても大丈夫です。発芽適温は20℃前後、生育適温は15~25℃と高めなので、寒い時季に播種すると出てこないことがあるので要注意。
種が大きいので、一晩水に浸してから、蒔くのもポイントです。土も硬いと、実が地中でできにくいので、砂質でやわらかい土壌で栽培してあげましょう。蒔いた後はしっかり土をかけて押さえ、不織布などで覆わないと、種=落花生なので鳥に食べられてしまう恐れがあるので、気を付けてください。
マメの仲間ですがツル植物ではないため、ツルを絡ませるための網は必要なく、背丈も幅も30~40㎝程で全体的にわさっとした感じに生長します。肥料が不足すると実が育ちにくくなるので、開花が始まる初夏から追肥をし、開花する前に株のまわりに土寄せを行うと、開花後の子房が地中に入りやすくなります。
ビニールマルチした場合は穴を大きくして土寄せしないと、ビニールを突き抜けて地中に入っていってしまうので、気をつけましょう。
開花時期は暑いですが、黄色い花とその花がおわって、子房が地中に入っていく姿を、是非観察してみてください!
そして秋に葉が黄色くなってきて、地中のサヤが膨らみ、硬くなってきたら、収穫時期。
株元から少し離れたところから、スコップを入れて、茎を持って引き抜くと、実がきれいに掘り上げることができます。
~落花生の食べ方~
収穫後、生で食べない場合はサヤをよく洗って、1週間ほど乾燥させます。サヤのままでも、中の実だけでも、乾燥材と一緒に缶や瓶で保存してもよいですし、冷凍用保存袋に入れて冷凍保存もできます。
乾燥した落花生は炒って、そのまま食べたり、お菓子や料理に使ったり、自家製ピーナッツバターを作るのも贅沢な食べ方です。
乾燥後の保存方法をご紹介しましたが、自分で収穫した場合や生の落花生を手に入れられた場合は、ぜひ、生のままいろいろな料理に挑戦してみてください。
ただし、生の落花生は、処理をしないとどんどんと鮮度が落ちてしまいます。すぐ塩茹でできない場合は冷蔵庫の野菜室で数日保存可能ですが、美味しく食べるためには、できるだけ早く、調理するか殻ごと塩茹でにしましょう。
【落花生の塩茹で】
落花生をよく洗い、鍋にたっぷりの水と、水の量の3%ほどの塩を入れて、40分ほど茹でます。味見をしてみて、まだ硬かったら、もう少し茹でてみてください。食感もよく、落花生特有のおいしさをシンプルに味わえて、いくつでも食べてしまいそうになるおいしさです。圧力鍋で茹でた場合は食感がかわってくるので、比べてみるのも面白いと思います。
生落花生の食べ方はほかにもあり、塩茹でにせず殻の中から実を取り出して「落花生の炊き込みご飯」や「落花生の甘煮」などにするのもおすすめです。どれも乾燥した落花生とは違う風味を味うことができ、栄養たっぷりの茶色い薄皮も食べることができます。そして、手間はかかりますが、生でつくるとおいしい料理が「ジーマミー豆腐」です。
「ジーマーミ豆腐とは?」
ジーマーミ豆腐は、沖縄の郷土料理。その名前は落花生を琉球語で「地豆(ジーマーミ)」と呼ぶことが由来といわれています。ジーマーミ豆腐は生の落花生が主原料。その滑らかでもちっとした食感と、濃厚な風味が特徴で、沖縄料理として親しまれ、販売もされています。
作り方は色々ありますが、基本的に一晩水につけた生の落花生の薄皮を綺麗にとり、水と一緒にミキサーでペースト状にします。ペースト状になったものを布でよく漉して、液体だけを取り出し、葛粉や片栗粉と一緒に鍋で粘りが出るまで、よく混ぜながら熱します。
最後に容器に入れて、冷蔵庫で冷やしてできあがりです。
作り立ては特に美味しいので、ぜひ、ご自分に合ったレシピを見つけて作ってみてはいかがでしょう。ちなみにタレはみたらし団子のような甘いタレも美味しいですが、わさび醤油や黒蜜をかけても美味です。
「落花生の栄養と効能」
落花生はカロリーが高く、食べ過ぎに注意することに目を向けがちですが、実は美容や健康効果が世界でも注目されている栄養食品のひとつです。良質なタンパク質や脂質(オレイン酸やリノール酸)、ビタミンEやビタミンB群や様々なミネラルなど、栄養が豊富で、免疫力の向上や老化防止、生活習慣病の予防、コレステロール値を下げるのに役立つといわれています。
また、食物繊維が豊富なため、消化促進や便秘改善に効果もあるそうです。ビタミンEや実の薄皮に多く含まれているポリフェノールには抗酸化作用もあり、体内の有害な活性酸素を除去する効果もあることから、細胞の老化を遅らせる食材としても知られています。
過度なカロリーをとらないように、食べる量は1日30粒までが目安です。加工の際に使われる油や塩分に気を付けて、素焼きの落花生を選ぶと良いようです。
このように、育てても食べても、楽しく美味しく、そして健康にもよい落花生。自分で育てた落花生は格別で、特に生の落花生は本当に一時にしか出回らない旬の味。興味のある方、おいしいもの好きな方、今年は自家製落花生いかがでしょう。